2019活動 -1

建築・都市VR・MR小委員会で2019年度に実施した主な活動内容 その1。2019年度 日本建築学会大会 で開催した研究協議会について。

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2019年度 日本建築学会大会(北陸)情報システム技術部門-研究協議会

建築・都市分野のVR・MR技術の展望

社会の発展や人々の安全・安心な暮らしを実現するために、最先端の情報通信技術の果たす役割はますます大きくなっている。

「VR(Virtual Reality:人工現実)の強化」は、目標が達成可能となった場合には人類の生活水準に大きな向上をもたらす「今世紀中に達成すべき14の重点技術目標」のひとつに挙げられた(全米科学財団)。近年では、現実に似せた三次元仮想空間をコンピューター上に構築する当初からのVRの進化に加えて、実写映像による360度パノラマ映像、現実空間では視認できない情報を重ね合わせるAR(Augmented Reality:拡張現実)・MR(Mixed Reality:複合現実)など多様な発展が見られ、VR・MRの研究開発と実用化が進められている。

建築・都市分野においても、VR黎明期より研究が始められ、計画・設計・生産・運用の各シーンにおいて、VR・MR技術が応用され始めている。さらに、BIM(Building Information Modeling)、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)、AI(Artificial Intelligence:人工知能)、シミュレーション等の技術と、VR・MR技術との融合や化学反応が期待されている。

  • 建築・都市分野で、VR・MRは、現状、どのように実用化されているのか?
  • 今後どのように発展していき、身の回りはどう変わっていくのだろうか?

今回の研究協議会では、建築・都市分野のVR・MR技術の展望として、大学、ゼネコン、ITエンジニア等から話題提供を行うとともに、議論を深めたいと考えている。そのため、頒布資料集には、登壇者に加えて、建築、都市、まちづくり、観光、防災、情報、医療、ゲームなどの分野でVR・MRに携わる研究者、実務者より幅広い観点から寄稿論文を収めた。

実務者・研究者・教員・学生にお集まりいただき、考えるための場としたい。

  • 日 時:2019年9月4日 14:00-17:30
  • 司 会:倉田成人(筑波技術大学)
  • 副司会:松永直美(レモン画翠)
  • 記 録:大石智久(パナソニック)
  • 主旨説明(5分)    福田知弘(建築・都市VR・MR小委員会主査、大阪大学)
  • 主題解説(①:40分、②・③・④:30分)
  1. 建築・都市VR・MRとシミュレーション・AIの融合 福田知弘(前出)
  2. ゼネコンにおけるVRの活用と期待      上田 淳(清水建設)
  3. BIMとVR                 濱地和雄(オートデスク)
  4. 国内外のVR・MRに関する動向について    安藤幸央(エクサ)
  • 休憩(10分)
  • 討論(60分)
    • コーディネータ 大西康伸(熊本大学)
    • パネリスト 福田知弘、上田淳、濱地和雄、安藤幸央(前出)
  • まとめ(5分)               笹田岳(鹿島建設)

研究協議会 開始前の様子


主旨説明

  • 建築・都市分野におけるVR・MRの研究が始められ、計画・設計・生産・運用の各シーンで応用され始めており、BIM、IoT、AI、シミュレーション等の技術との融合が期待されている。
  • VR・MRは現状どのように実用化され、今後どのように発展していき身の回りはどう変わっていくかを、先進事例の紹介を交え本協議会で議論したい。

主題解説① 建築・都市VR・MRとシミュレーション・AIの融合

福田知弘(大阪大学)

  • 研究テーマと併せて具体的な事例の紹介。境港市の水木しげるロードでの将来像を市民と共有するコミュニケーション・デザイン、BIM・CFDシミュレーションとの連携、リアルタイムオクルージョン付きMR景観シミュレーションなど。
  • 目まぐるしい技術進化の中でのVR・MRを中心としたIT技術の活用可能性を説明。

主題解説② ゼネコンにおけるVRの活用と期待

上田 淳(清水建設)

  • 各業務段階でのVR・MR技術活用の具体的な事例の紹介。バーチャルコンストラクション、MR技術による施工情報可視化、安全教育や建設重機の遠隔操作など。
  • 従来手法に対し「建築ものづくりをわかりやすくする」技術が、より日常的に簡単に活用できる身近な存在になることを期待。

主題解説③ BIMとVR

濱地和雄(オートデスク)

  • 建設業の労働生産性の低さに対し、IT技術活用も十分でない。その中で今後活用可能な技術について紹介。
  • データが希薄な建設業で、「BIMの義務化と標準」、「膨大なデータと責任」、「分散したプロジェクトチーム」の課題に対し、”Common Data Environment”という考えが必要と説明。

主題解説④ 国内外のVR・MRに関する動向について

安藤幸央(エクサ)

  • 既にVR・MR技術は一般社会に浸透し活用されるようになったという認識とともに、スケール感を把握するための課題に対応した技術や、シーグラフ2019からの海外事例、国内の先進事例の紹介。
  • 今後はVR空間の構造を考えた空間設計や、VRの世界ならではの建築家が生まれてくることを期待。

討論

コーディネータ  大西康伸(熊本大学)|
パネリスト  福田知弘、上田淳、濱地和雄、安藤幸央(前出)

  • VR・MR技術の進展に対する現状の課題を基点に、「ステークホルダ間の合意形成での活用」、「BIMの出口としてのVRの位置付け」、「コンテンツの生産性とソフトウェアの互換性」、「ヘッドセット等のデバイスへの期待」、「3D酔いへの対処ノウハウ・技術」、「都市モデルのオープンソース化、データに対する行政・市民の考え方」など。
  • 個々の取組みの進化とともに、グローバルでの技術者の連携や情報共有の必要性を認識した。

まとめ

笹田岳(鹿島建設)

  • 「技能労働者の不足、労働生産性の課題」、「施主ニーズの多様化に伴う、設計段階での合意形成の重要性の課題」、主にこの2点に現状のVR・MRへの期待、活用のメリットがあると考える。
  • 皆が「遊び心を持つこと」を意識しながら、建設業界でのこれら技術の益々の発展が期待される。

頒布資料集

  • 全86ページ
  • 著者:27名(大学: 14、企業: 11、行政: 2;国内: 24、米国: 3)
  • 販売部数:160部
  • 販売価格:900円
  • 上記の報告は、建築雑誌 2020年2月号 大会概要報告にも掲載されています。
  • 当日は、169名が参加されました。

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